参院選低投票率問題 課題は「ソフト」にも「ハード」にも

シビックスクールの卒業生の投票率は3割

7月21日投開票の参議院議員通常選挙は、3年前と比べ18歳・19歳の投票率が大きく下がったが、投票に行かなかったのはシビックスクールの卒業生も同じだった。

NPO法人 NEXT CONEXIONが主宰するシビックスクールの卒業生(18歳・19歳)を対象に、参院選に関するアンケートをとってみると、次のようなことが分かった。 

今回、15名中12名から回答をいただいたが、そのうち投票に行ったのは4名。

なんと、3割しか選挙に行っていなかったのだ。

18歳・19歳の投票率が31.33%だったことを考えると、投票率という点では、シビックスクールの卒業生と一般の18歳・19歳では大きな差がなかった



棄権の理由は、決して「政治的無関心」ではない。

ただし、彼ら・彼女らが投票に行かなかったのは、単なる無関心ではなさそうだ。

というのも、投票を棄権した理由のうち、「選挙にあまり関心がなかった」「面倒くさかったから」と回答した人は1人もいなかったからだ。

(選挙に行かなかった理由について。複数回答可)  


政治的・社会的な関心も決して低くはない。

「ニュースに関心がありますか?」という質問に「する」と回答した人は、なんと8割以上

また、「友人や家族とニュースの話をしますか?」という質問に「する」と回答した人も7割以上だった。

つまり、彼ら・彼女らは単に「政治や社会に関心がなかった」わけではなく、「選挙に行く機会がなかった」わけである



立ちはだかる「住民票」の壁

これは、いわゆる「住民票問題」が大きい。

そもそも、選挙で投票をする場所は、原則「住民票がある市町村」となる。

しかし、大学卒業後に地元へ帰ることを想定している場合などは、進学の際に住民票を移さないことが少なくない。

選挙管理委員会も、学校での啓発の際に必ず触れるのがこの「住民票について」なのだが、高校生・大学生にはあまりピンと来ていないようだ。

上記のアンケート結果からも、棄権の理由が「住民票を移していなかったから」だったことがわかる。

実際、選挙に行った4名のうち、3名は県内にそのまま残った学生であり、県内に残った学生は全員が選挙に行っていた



若者の声が反映される選挙のために、若者の声が反映された選挙制度を

今回の参院選も、若者の低投票率の理由として「主権者教育」を課題に挙げる記事が多くみられた。

僕自身も先日「あれから3年。そろそろ「主権者教育」を本格的に問い直すべきでは?」の中で、主権者教育の課題を指摘した。


しかし、それと同時に「投票環境の是非」について、本格的に議論がなされることを期待している。


「本格的に」と書いたのは、「18歳・19歳世代も含めた」という意味をあえて強調したかったからだ。

そもそも、日本は若者政策について議論をする際、しばしば若者を置き去りにしている感が否めない

実際、2022年から民法上の成人年齢が18歳に引き下がることが決まったが、これについても、愛媛県内の高校生の半分近い学生が「早いと思う」と回答をしている。

(愛媛県内の高校生を対象に昨年度調査を実施。約5,500名から回答をいただいた。)


若者自身に関わる課題だからこそ、彼らの意見をしっかりと聞き、反映させる制度を作っていくべきではないだろうか。



民意が反映される社会の実現のために

ときどき、講演で選挙の話をさせていただくときに、選挙を「自転車道」に例えることがある。

自転車道は、「自転車による事故の防止」が主な目的の1つだが、「作れば解決する」わけでは決してない。

自転車道という「ハード」を作ると同時に、自転車に乗る人のマナーといった「ソフト」を作っていくことをしないと、結局事故は起きる。

自転車事故を防止するには、「ハード」と「ソフト」の両輪を充実させることが重要だ。 


選挙も同じことがいえる。

「選挙へ行きやすい環境を作る」だけでは、選挙が本来持つ「民主主義」の成熟にはつながらない。

一方で「主権者としての資質や能力」を育む主権者教育は「ソフト」の面を持つが、それだけではなかなか効果が上がらないことは明らかだ。


より多くの民意を反映できる社会にするための整備は、まだまだ始まったばかりだ。