主権者教育が、中等教育で実施されにくい要因とは?

2019年3月16日


以前、「世間一般では、主権者教育は高校で実施することが重視されがちですが、中等教育で実施する意義と実施されにくい要因とは何だと思われるか教えてください。」という質問を受けたことがあります。

中等教育で実施する意義については、このブログでもいろいろと書かせていただいているので、今回は割愛させていただきますが、実施されにくい要因は「主権者教育が『選挙の教育』という理解で浸透をしている」ことに尽きると思います。

本来、主権者教育は「そもそも『市民』や『主権者』とは何か?」を問い直すところから始め、「こどもやオトナ関係なく、市民や主権者としての資質や能力を養う」場を作る必要があると思いますが、まだまだそこまでたどり着いていないのが現状だと考えています。


以前、ある選挙管理委員会の方から「選挙管理委員会のできる啓発は、『投票所にいかに一人でも多くの人に行ってもらうか』というところのアプローチだ」というお話を聞いたことがあります。

一方で、主権者教育活動に取り組む僕たちの役割は、「その一人の意識をいかに高められるか」というところになるのではと考えています。


例えば、「市民が快適に目的地にたどり着けるように『自転車道』を整備したり、それを利用してもらうよう啓発する」のが選挙管理委員会の役割なら、主権者教育の役割は「『自転車道』を利用する市民の意識を高めること」となります。

ただ、自転車道が整備されたら、誰でも自転車マナーが自然に向上し、事故が減ったり交通トラブルがなくなるわけではありませんし、きちんと状況を把握し、適切に設置をしなければ、逆に市民の反感を買う結果になることもあります。

自転車道が整備されたら終わりではなく、自転車マナーの向上を図ったり、それを利用したりそれによって不便を被る人たちが、より快適に使うためにはどうするかを話し合ったりすることが大切になってきます。


選挙啓発と主権者教育の関係性も同じことが言えると思います。

一人でも多く参政権を行使できるよう、投票所への「道」を整備することも大事ですが、同時にその「道」を利用する市民の意識を高めることも大切です。

また、「自転車道」を利用する市民の意識を高めれば、その結果「自転車道」がなくても他者のことを思いやりながら自転車を利用することができるようになるかもしれません。

実は、これが一番理想的な形ではないかと、個人的には考えています。


学校現場でも、主権者教育を「選挙の教育」の枠に収めるのでなく、「選挙に行く人の意識を高める教育」という視点から取り組むところが増えているように実感しています。

「選挙の教育」から脱皮をし、さらなるアップデートを進める主権者教育が浸透すれば、中等教育で実施されにくい要因は解消されるように思いますし、そういったお手伝いを今後もできればと考えています。